転スラ

転スラ・感想/するする読める&見れる37歳元ゼネコンスライムと魔物たちが築く安定力

2018年秋アニメはこっそりと、転スラとゴブスレ見ていました。

今回はちょろっと転スラの感想を。(‘ω’)ノ

転スラを見ようと思ったきっかけ

単純に、キンドルでアニメ放送以前から転スラを読んでいたからです。アニメ放送が決まったときは、「いずれくろうだろうなと思ってたよ」とちょっとニヤつきました。

確かコミック版が1巻無料だったことで、読み始めてみたのだったと思うのですが、あれよあれよとそのとき出ていた巻数すべて読んでしまいました。

出版社と作者さんの策謀にあっさり引っかかったわけですね。(笑)でも、このキンドルでまずは原作を無料で読めるのは、アニメ前の予習にせよ、単に興味を引かれたにせよ、ありがたいですよね。

▲ アニメが始まったりすると、キンドルの場合は無料で1~2巻が読めるので、このアニメどうかなぁうーんと迷っているなら、キンドルアプリを使ってみるのも一つの手

アニメどうだった?

「(うん、どうしてもだ!決定な!嫌なら絶交!二度と来ない!)」


「仕方ないな、お前の友達になってやるわ感謝せよ!(汗)」

「転生したらスライムだった件」は、まずはオーソドックスに読みやすい&面白いと思いました。アニメを見ていてもそれは思いましたが、コミック版を読んでもそれは実感していました。

このオーソドックスとはつまり、癖がないということでした。とくにそれは、自分がスライムだと自覚し、ゴブリンたちをまずは助け、次に家をつくろうとするが技術がなく、じゃあ技術のあるドワーフを仲間にしよう、そしたら同じく転生(召喚)してきた日本人女性と出会った、でもまもなく死んだ、しかもおばあちゃんになって。……など、この一連の過程とやり取りがするすると滑らかに進んでいく見事な物語の流れで、そう思いました。

気になったので、なぜこんなにもスムーズに物語が進むのか、考えてみました。

なぜこんなにスムーズに話が進むのか、理由

1.仲間になるのは魔物たちで、みんなリムルに忠実だからするする進む


まずは主人公であるリムル・テンペストの仲間には魔物が多いこと。

ファンタジー世界でおなじみの魔物たちはいわゆる「力至上主義」で、たいてい弱肉強食の世界で生きています。弱いものは強いものに従います。一部の知性が高い酔狂な魔物や、気質の穏やかな魔物などをのぞき、そこに理由はさほどありません。立ちはだかるのはもしかしたら自分の身が危ないほどの、一つの絶対的な権力です。

転スラの世界でもそれは変わりません。だから、リムルという絶対的強者には一つの絶大な権力もとい人権があって、魔物たちはリムルと対峙したときに半ば「死」を覚悟します。「魔素」という力の差を感じ取れる存在の影響もありますが、そのとき魔物たちは人間ほど感情論でじたばたしません。


「思うところはあります。しかし我が主は戦いに負けた我々を許したのみならず名前まで授けてくださりました。感謝こそすれども恨むようなことはありません」
▲ リムルがランガへ問いかけるシーンなんかが印象的ですが、むしろ理性的とさえ言えるかも。

また、彼らは基本的に名前がなく、名前を与えてもらうこと(ネームドになる)で、名前をくれた存在を「絶対的な主人」とします。転スラの面白いところの一つです。


「誰だよ!」
「リグルドです」
「3日の間に一体何が…!?」
▲ リグルドは個人的にちょう好きw

主人と従僕としての契りを結ぶだけでなく、力まで分け与えられるのだから、そりゃあ歯向かうこと、対立問題も発生しないし、基本流れがスムーズになるよねって。この関係性には、厳密にいうと「設定」なんですけど、仲間の多くが魔物であるオーバーロードのキャラクターたちとアインズとの力関係を彷彿とさせました。

転スラの少しほんわかした雰囲気では考えづらいのですが、リムルから死ねと言われたら、仲間である前に「忠実なしもべ」でもある彼らは死のうとすると思います。作者さん・リルムともに、そういう方向にはなかなかもっていかないとは思いますけど、細かい裏設定の一つとしてあるんじゃないかなあと思います。

2.ファンタジー的説明を敏腕秘書に置き換えているからするする進む


転生ものに限らず、ファンタジーでは世界観の説明が必ず必要になってきます。導入をいかに軽快なテンポで進めるか、あるいは、読者(視聴者)が作品中に得た知識を自分の知識として “いかにスムーズに使わせるか” が、重要になってきます。編集さんがつくと、まず最初に見られるところ。

転生したらスライムだった件では、三上悟――リムル・テンペストの脳内に「大賢者」という存在が居座って、ちょいちょい顔を出しては、世界観やスキルのことについて説明してくれます。解。

▲ ついでに図でも完璧。スタッフがんばってる

大賢者の情報はとにかく正確で間違いがありません。何も知らないリムルは大賢者から助言を得つつ、転生ものらしく、転生後の世界の常識では通じないレベルの桁の違うことを次々にやってのけます。

脳内ツッコミ&考え事は、転生ものではお決まりですよね。主人公の知識とか性格、嗜好なんかも見れますし、僕たちの(ゲームファン的な)現代知識との共有もできて、序盤の楽しみどころでもあります。文章としても、説明的でなくなり、砕けるので、だいぶ読みやすくなります。


「(す、すごい能力だな捕食者って。スライムが持ってていいものなのか?まぁでもせっかくだから試しに食べた草解析してくれる?)」
《解析が完了しました。ヒポクテ草、魔素の濃厚な場所にしか繁殖しない貴重な薬草。傷薬、回復薬の原材料》

そんななか、転スラの脳内で会話をできるようにしてあるのはなかなか新鮮です。転生直後の主人公は、誰か親切な女の子と出会うことはあっても、脳内はぼっちで、独り言多めですからね。(ナビゲーター・NPCという意味だとMMO系の転生ものにならある)ひと昔前のファンタジーだと、「妖精の相方」とかが相当します。ゼルダのリンクとかがそうです。

この大賢者の、編集者にも読者にもやさしい脳内情報は、正確で推測などは基本ありません。そのときわからないことでも、分析でほぼ分かってしまうという敏腕秘書です。そんな敏腕っぷりなので、アニメを見るほうでも本来もう少しこまごまとしているはずの設定に関して疑惑もさほどなく受け入れることになり、リムルが納得するように「そうなんだ。なるほどね」で終わります。スピーディな理由。

転生ものの主人公は、転スラと同じように、最近でははじめから最強な能力の持ち主も多いですが、異世界の一般常識などの情報がないので、結構こけることはこけます。それもリルムにはありません。絶対的な知識と分析力を持つ大賢者という敏腕秘書がいるから。Google+Wikipediaを完全に味方にしたらそりゃあ強いし、展開をスムーズにしますよね。

3.主人公が37歳でゼネコン勤務の男性だからするする進む


僕が最近ちらちら読んでいた転生もののマンガのなかで、転生前の現代人の頃に30歳を超えている大人の主人公が数人いました。

勇者(最強)になる。冒険に出て異世界の住人に会ったりしてファンタジー(ゲーム)世界を堪能する。異性にモテる。異世界転生ものの主人公が当初に抱く憧れとか目標は、おおざっぱに言うと、だいたいこんなところ。これは30歳以降の世代を主人公に据え置いてもあんまり変わりません。(さすがに異性に対しては一歩下がっている節はあるけれども)30歳以降ってもろゲーム・アニメ・ラノベ世代だからね。

話が進むうちに、主人公のちょっと変わった特技からイベントが進んだり、序盤の最強な敵と出会ってしまって物語の主要キャラと出会ったり、逆に、貧弱な初期ステータス・スキル配分とかで、勇者になれる要素をまず初めに打ち砕いてしまったり。

作品ごとにいろいろな方向性がついてくるんですが、30歳を超えている彼らの若い子たちの情熱とか可愛らしさとか、世間の受け入れ具合とかに負けない最大の武器の一つが「会話力」です。経験達者ですからね。三上悟も大手ゼネコン勤務でした。


リムル・テンペストとなった三上悟の交渉事は、ゼネコン勤務の手慣れた交渉術のままに、基本的にうまくいっています。相手は自分と力の差がある魔物も多いし、交渉とは言えないかもしれませんが、リムルはなるべくはじめから最後まで穏便に、かつ魔物たちと対等の目線で話を進めています。(またオバロを持ち出してしまいますが、リルムもまた魔物たちに社会性を説いてます)

そうして、のちのちはしてやられてしまうこともあるのですが、自身の持つ最強な力や機転でやり返します。やっぱりなるべく波立てないように多少苦心しつつ。火のないところにはなんとやらです。

37歳で童貞。現実世界だと、実際に三上悟が心の奥底では感じていたように、結構なネガティブ要素かもしれません。ですが転生後には、三上悟は性別がなくなってしまいます。パソコンライフをエンジョイしていて、結構独身貴族を満喫していた三上悟がおそらく唯一といってもいいくらいだったネガティブな要素はなくなってしまいました。


「なんという美少…年?女?」
▲ 一応見るところは見ますし、意識もしていますが、リムルはここから魔物化したと言えるのかも。

まとめのようなもの


▲ 90年代を意識した想像のエルフ。ディードリ……

話を冒頭に戻して、オーソドックスという言葉は、引いてみると「正統派。正統的であること。」とあります。つまり転スラは転生ものの正統派と言えもすることになります。アニメなら「王道もの」とも言い換えられますね。

じゃあ、転生ものの正統派や王道ものってなんだ?って考えてみると、出てくるのはやっぱり主人公の成長物語です。異世界での再スタートですね。そこに仲間との出会いを加えていって。冒険ももちろんして。僕たち読者と一緒に、異世界の魔法の概念とか国々の関係とかの異世界の一般常識を学びつつ、レベルも1からアップして。果ては魔王を倒したり、リムルのように国を興したりするかもしれませんけど。


外見が最弱モンスターであるスライムで、そしてヴェルドラの力という最強の力の持ち主でもあるリルムの物語は、ぱっと見は「最弱系」「最弱だけど実は最強系」または「人外系」なので、オーソドックスとはだいぶ遠い印象があります。でも中身を見てみると、そんなことを忘れるくらい穏便に、上の3点を中心に、とても滑らかに話が進んでくれます。(サクサクという表現とは違う気がします)


「はい、今みんなが静かになるまで5分かかりました」

リムルの持っている力は強大すぎるほど強大ですが、リムルが着々と進めていることは、一般常識を知ることにせよ、スキルを会得するにせよ、仲間を増やすことにせよ、ボスを倒すことにせよ。レベル0からのレベルアップです。ヴェルドラの力は最強系らしく主人公が他者を圧倒するためにあるのではなくて、リムル横の繋がりを安泰にさせるためだけにあるかのようにも見えます。


ダークファンタジーもので正統派という言葉を使われることはほとんどないですが、主人公が魔物でもやっていることが「正統派」なら、ぜんぜんありなんだなあとも改めて思いました。