賢者の孫

賢者の孫/10話感想 ラスボス的相手が復讐を遂げてしまって無気力になるというストレートな展開は興味深い【神回】

筆者は賢者の孫はマンガでではありますが、ある程度読んでいます。

なので、賢者の孫がなろう的セオリーや、異世界ファンタジー的セオリーを存分に踏襲した物語であることは知っていますし、シンたちの倒すべき相手であるシュトロームが無気力になることは知ってはいるのですが、

改めて映像で見てみると、斬新で個性的で、そして悲劇性の高い内容だなと思います。賢者の孫を気軽な気持ちで見ている人は多いと思うので、「重ッ」と思う人は多そうですけどね。

10話の概要

「さて この後どうしましょうか。帝国を滅亡させることが私の目標でしたからね。もうすることがないんですよ」

シンたちが強化合宿を行っている頃、仇敵のシュトロームは、なんと既にブルースフィア帝国の都市から村まで、地図にあるめぼしい場所は軒並み滅ぼした後でした。後々のことは分かりませんが、帝国の歴史は幕を下ろしたと言っていいでしょう。

帝国を滅ぼすことは、シュトロームの長年の復讐であり、目的でもありました。魔人たちは世界征服や魔人の国の設立に勇みますが、シュトロームは面倒だということを理由に全くやる気がありません。

なら勝手にやらせてもらうという魔人たちに、「勝手にどうぞ」と言う始末です。

「よろしいのですか?彼らをあのまま放置しておいて」

「構いませんよ。既に帝国を滅ぼすという目的は達したのです。好きにやらせておけばいいでしょう」

そんなシュトロームに、ミリアはなぜ帝国に復讐しようとしたのか、その理由を訊ねるのでした。

復讐劇にまつわる旧式と新式

(倒すべき)敵の大将が、壮絶な過去に心を囚われているのはよくあることです。いや、よくあることというより、バンズと牛肉くらいの「お決まりのセット」ですね。

賢者の孫は、主人公勢と敵の大将勢が国と国で大々的にぶつかっている話ではないので、その復讐心がシンたちに向けられてはいないのですが、それにしても、大将がやる気をなくすというのはなかなか斬新です。しかも結構極端に。(笑)

大抵のファンタジー話では、復讐が主人公たちに阻まれるなり、ライバル視するなり、あるいは敗走したりと、主人公の成長のための生贄となり、なかなか復讐が遂げられませんからね。

この図式をあえて旧式とするなら、あっさりと復讐を遂げてしまった賢者の孫のタイプは新式と言えるでしょうか。最初から主人公が最強っていうなろう系は、新式ですしね。

感情に呼びかけにくい新式ながら高い悲劇性を生んだ

悲劇を作ること自体は難しいことではありません。身内や恋人を殺したり、国を亡ぼす。これだけです。(創作仲間がいるなら、「ここでこの子を殺しとこう」とか話してる人もいるんじゃないでしょうか。物語が面白くなりますからね)

この後、悲劇性を高めるためにどう料理するかは、作者やあるいは編集者の手に委ねられるのですが、シュトロームの場合は、嫁、しかも妊婦を殺されました。さらには腹に槍を刺されて。

正直目を覆いたくなるような惨劇です。マンガで読んでも、うわぁ…とつぶやいた覚えがあります。

▲ ひどいという言葉しか出てこない

妊娠中は、基本的に一番愛が深まっている時期ですからね。

家族を賊にやられたというのは、さっきも出したバンズと牛肉くらいの定番コースですが、妊婦の腹を突き刺すのはなかなか出来ることではありません。(物語の構造をよく知っている人ほど、刺せないでしょうね)子供の顔を見れずに終わったシュトロームの心境は言うまでもなく頭を掻きむしったり、そこら中のものを破壊しつくしたくなるものでしょうし、さらには構図がグロというほどでもないのがまた、視聴側のこちらとしても心に刺さります。

「許す? こんなことをしでかした愚か者を許す? 一体何をふざけたことを言っているのですか?」

「皇帝から貴族、平民に至るまで…全てを滅ぼしてあげますからね」

「許すわけないだろう……!」というセリフは非常に納得のできる台詞で、若きシュトロームの泣き顔と敬語と主に、うるっと来た人も多いかもしれませんね。復讐はダメだ、という言葉を軽々しく言えないものこそ本当の、血みどろの復讐というもの。


▲ やったのは、シュトロームにあっさり殺されたこいつ

で、そんなシュトロームは話の途中であっさり復讐を遂げてしまい、無気力になってしまいました。

なぜ無気力になってしまったのか? シュトロームの憎しみは魔人化してしまうほどの高みに登っていたに他ならないから。その復讐心を、本来なら阻まれることが多く、むしろ悪人として裁かれてしまうところを、話の途中で成就させてしまった賢者の孫の展開は個人的にとても斬新で面白いと思いましたし、改めて神回だな~とも思いました。動くアニメだからこそってやつも多分にありますね。

▲ で、ミリアも報われないっていうのがまた、ね

そんな裏で

(アルティメット・マジシャンズって!)

「アルティメットマジシャンズ出陣!」
「オー!」

そんな裏で、シンたちは頑張るぞーと飛び出していくのでした。かるっ(笑)

善行と正しい義を求めて重ねていく人間と、そうでない魔族の対比って感じがよく出てる、と見ることもできます。元から賢者の孫は、緩急がしっかりついてる話ですしね。

「アウグスト=フォン=アールスハイドよ、汝は王太子となりこの国のために身を粉にして邁進することを誓うか?」

「私はこの国のため、国民のために命を捧げることを誓います」

もっと楽しむ方法

賢者の孫は、動画ストリーミングサービスのサイトで一気見することができます。

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