3話で最後のテロリストとして現われた糸目でグレン曰くイケメンな魔術師ヒューイ=ルイセン。(アニメではヒューイ=ロスターム。)
黒幕であるとうなずきはしたものの、グレンが決死の解呪中、ヒューイは棒立ち&全く手を出しませんでした。
この行動に視聴者からは結構なツッコミを受けていましたが、なぜ彼は手を出さなかったのでしょうか?
ヒューイは戦えない魔術師
「先手必勝。決まった。残念だったな。俺の勝ち…」
「僕の勝ちです」
ヒューイはジンやレイクとは違い、戦闘向きの魔術師ではありません。
結界や魔法陣を練成、あるいは解除するのを得意とするいわゆる裏方、“技術系の魔術師”です。(中世ファンタジー系なら、魔法陣を囲んで「☆◎◆~」と、両手をあげてるモブの人たちですね。)
相手はキャレル、ジン、レイクほどの暗殺のプロ三人を倒してしまったグレン。しかもどうやら魔術を無効化するこの世界では反則みたいな魔術ももっています。
「これはゲームです。ルミアさんを拘束している転送方陣を解けばサクリファイスは発動しませんが、愚者の世界の効力切れを待つタイムロスで解除は間に合わない。どうしますかグレン先生?」
…と、魔術師のほとんどが戦意を失うようなグレンが相手なので、技術系であるヒューイもまた戦う意思を持たなかったのですが、ここには天の智慧研究会の目的遂行を第一とし、どのような犠牲も厭わないテロリストらしい盲目的な思想と、「ゲームです」というようにヒューイの性格、感情の起伏の少ない理系らしい諦念もあったかもしれません。
▲ ヒューイを「空間魔術系の稀代の天才」とはセリカの言
ただし面白いのが、グレンも色々と変わっている面はあるものの魔術の構築面では固有魔術を作り出すほどやり手の“魔導士”だということ。
そもそも転送方陣の作動中のために動けない
もう1つに、視聴者から「動けないことにしておこう」とも言われているところでもありますが、ヒューイの足元の魔法陣が、ヒューイの魂を触媒にしていることにより動けないことです。
「同時に構築済みのサクリファイスの発動。僕の魂を喰らって魔力を錬成しこの学院の全てを爆破します」
▲ なにげに足の踏み場もないほど描かれてる法陣
原作でも、この転送方陣に繋がっている【サクリファイス】という換魂の儀式の作用のために、動ける動けないの描写は特別ないのですが、動けないから何もしなかったというよりは、きちんと作動させるため、発動までは一切の魔術が使えないと言った方が説得力あるかもしれませんね。(ちなみにあえて時限式を取っているのは、生徒たちを生贄として持ち帰るための時間稼ぎか見せ場作りでしょうね。)
10年の赴任で芽生えた教育者の心
「計画は順調ですか?」
「はい。ただあのセリカ=アルフォネアが連れて来たグレンとかいう…」
「ただの三流魔術師。我々の敵ではありません」
ヒューイはやがて来る王族や政治要人を殺すために派遣されたスパイではあるんですけど、実は講師として赴任していた月日は10年にものぼります。
ヒューイの講師としての評判の如何は、いい子なルミアの悲痛な叫びでしか見られませんが、筆者も普通に親しまれたいい先生だったろうなぁと思います。(グレンも魔術に詳しいことが知られたら一気に親しまれましたし、みんな基本的に魔術に真面目ないい子。)
アニメでははしょられてしまいましたけど、解呪された後、ヒューイはグレンに対して「何よりも生徒たちが無事でよかった。そう思います」とこぼしました。
「ここで諦めたら俺の人生は一体何だったんだ!正義の魔法使いに懸けた人生…無意味だったのはわかってる…。だが…無価値にだけはしたくないんだ!文句あるかこんちくしょう!!」
グレンも教師の鑑な、主人公らしい台詞を吐きましたからね。
「僕の負け…ですか。組織の言いなりになって死ぬか組織に逆らって死ぬか。僕はどうすればよかったんでしょうか」
「知らねぇよ。同情はするが自分で道を選ばなかったお前が悪いんだろ。てめぇの不始末はてめぇで片付けろ!」
そしてヒューイは、「あなたにはもっと早く会いたかった。今、強くそう思う」と、グレンの歯ぁくいしばれよパンチを甘んじて受けとめ、安堵するのでした。