FEHをプレイしている人は知っていると思いますが、発売されましたね、「ファイアーエムブレム Echoes(エコーズ)」。
どんなゲームか、エコーズについて、つらつら書いてみました。
FEシリーズの概要
エコーズは、FEシリーズでは16作目になります。開発はおなじみ任天堂ですね。
’90年より発売されているFEシリーズは、据え置き機ゲームのジャンルにおいて、主人公の存在しているコマゲーム、「シュミレーションRPG」を確立させた作品の一つ。
「キャラは死んだら戻らない」というのが共通の特徴で、結構シビアなゲームではありますが、その分のやり応えは随一。(最近はそのルールでいくか事前に選べます。)たくさんのファンを生み、親しまれました。
2000年以降は、その作風のブレなさ加減、世の中の新しい流行や、メイド、コスプレ、同性愛などといった嗜好の身軽さを知らないかのような剣士と貴族と王城とマントとドラゴンな正統派中世ファンタジーを貫く真面目さで憂き目を見ていた時期もありましたが、
マルスやロイなどのスマブラでの国内に留まらない認知や、「覚醒」「if」などの新作で今の人にも親しみやすい作風と内容に一新することで、近年は新しく若いファンを獲得、息を吹き返したとはファンによる通例の言です。
イラストライクなキャラクターデザイン
新作のエコーズにもその流れがありますね。
前作「覚醒」「if」が好きな異性キャラとの結婚システムや今風の会話などで現代風にチャレンジした作品なら、2作目にあたる「ファイアーエムブレム 外伝」をリメイクした今作エコーズは、古典派です。
ただ、粒揃いの左氏のキャラクターデザインが体言しているように、その古典派のイメージには古めかしさがありません。鎧の傷や装飾の細かな部分まで描かれつつも、グラデーションの入った髪型のキャラや背丈の低い可愛らしいロリキャラもきちんといて、現代風がしっかり意識されています。
▲ ミラ神官、モブなのにこのクオリティ(敵兵士モブの中世兜も鼻筋や顔全体をしっかり顔を覆っている。)
じゃあ、FEシリーズ特有の誠実な古典派感、正統派中世ファンタジー感はどこにいったのかというと、ストーリーやボイスなどにしっかり内包されています。
失敗のないフルボイス
今作エコーズでは、シリーズ初のフルボイス作品となっています。(「幻影異聞録♯FE」を除く。)今時作品からしてみればフルボイスはそう珍しいものでもないので、FEシリーズの晩成感も感じられるところ。
“アニメ調”であることが不得手な往年のファンからしてみれば、戦々恐々な部分も否めないフルボイスですが、声のあてられた彼らはれっきとしたバレンシアに生き、戦いに巻き込まれていくFEではおなじみの人々です。
筆者の感覚が入りますが、声や演技とキャラクターが合わないと感じたキャラはいないです。
絵が好みだから、このキャラに一目惚れしたからといった理由でゲームを手に取った経験のある人は特に身にしみてご存知かと思いますが、キャラクターデザイン(立ち絵)と声優さんの声や演技との乖離はままあります。
エコーズのボイスでは、「絵は好きなのに声優が…」「そういう(メタい)のいーから」というのがほぼほぼないです。(一つ例を出せば、愛され声優の子安さんがしっかりお兄さんをやってます。しかも例によっていいキャラ。あとベルクトの喉が擦り切れそうな演技はやばい。)台詞の一つ一つが主語述語、それからそうなった理由がしっかり明記、汲み取れることも影響しているかもしれません。
▲ アニメーションはProduction.I.G.
フルボイス作品ではキャラの一人くらいは棒読みさん、二流さんがいることも珍しくないですが、そうしたことも特にないようです。(役柄か演じ分けかはさておきティータがそれに近いけどしっかり生かされてる種類。)
そうした具合にかなり丁寧に声があてられているのが見受けられ、またそれぞれのキャラのエピソードもコンスタントに、いい塩梅に掘り下げられています。
▲ 個人的には仲間の女の子に「別に仲良くしたくない、そういうのいらない、アルムのところがいい」とさらっというエフィ、アトラス、ジュダ、ジークあたりがいいキャラしてると思った。クレーベとルカの、特にルカの冷静さ、穏やかさの完璧な加減はエコーズの一つの象徴。
ノベルゲーム感のあるシナリオ
エコーズはボイスが優れていることも手伝い、サウンドノベルゲームにも近いところがあります。
優れたボイスに伴ってキャラクター像は当然のように失わず、FEの世界観、ないしは王侯貴族の戦いを描いた古きよき中世ファンタジー感からはみ出ることなくみんな普通に真面目に喋り、懊悩していくので、すごくしっぽり浸れます。僕らはエフィを簡単にヤンデレとカテゴライズしますが、アルムはしっかり村出身の純粋な少年で、ヤンデレと言う言葉も、また意味も知りませんし、エフィに拒絶されるシルクもただどうやって女の子としてエフィと仲良くできるかミラ神を崇めるシスターらしく接していきます。(なんとなくアトリエシリーズを思い出したんだけど、そうしたら左氏がそうだった。)
文章は、構成・台詞・表現ともに手堅いかつ読みやすい、安心感のある作家さんによる上巻、下巻に分けられた珠玉のファンタジー小説の印象があります。長さの割りにくどくないんですよね。本当に「ほどよい」。原作の外伝を踏襲しつつも、原作がファミコンなだけに、ほとんど新作に近いアレンジになっていますが、エコーズはほんと良リメイクだなぁと思いました。
▲ オーディンスフィア(アトラス)
このテキストをベースにボイスやBGM、背景絵を当て、構築したはずのエコーズの雰囲気の上質さ加減は、FEという枠組みを抜きにしても、ゲーム界隈ではそう見かけるものではありません。そういう意味ではある種「FE的でない」とも言えそうなんですが、ともあれこんなゲームあるんだなぁと、そこまであれこれゲームをプレイしているわけではありませんが、ちょっと前だったらオーディンスフィア、今ならニーアオートマタみたいに、久しぶりに感動した次第です。
世界観を堪能するためのバトルシステム
上ではテキスト面や雰囲気、ゲームとしての価値の面で割りとべた褒めしましたけど、バトル面は可もなく不可もなくといったところなようです。(これすらも備わっていたらこの“FE外らしいエコーズ”はなかったかもしれません。)
シュミレーションRPGゲームとしての難易度は前作「if」の白夜と暗夜の中間ほど。決してどうにもならないレベルで難しいわけではないので、ハードなゲーマーでなくてもプレイできる難易度かと思います。比較対象がゲームバランスという言葉すら当てはめづらいファミコン時代のシステム仕様ではありますが、これまでの作品の良い部分をあてつつ1手以上戻せる「ミラの歯車」が投入してあるなど、不親切といったことは特にないはずです。
細かい部分でボイスも入っていたりもしますが、バトルの演出面は割と単調め。世界観を壊さないように、しっかり演出ができるように文章が練られていて、声があてられているためもあるでしょうけど、先の展開が気になる人も多そうなだけにこれは助長されそうです。
キャラがうろたえたり赤面してくれたり、普通のプレイ(ストーリー進行)では絶対に見られない表情や仕草も見ることができる結婚システムなどのあった「覚醒」「if」が好きな人、現実感とともに親近感を寄せたい人は特に物足りなさを感じるかもしれません。
総じて、絵や作品の雰囲気でゲームを決める人は、あまり他人のレビューや評判は気にせず手にする人も多いとは思いますが、ハードなシュミレーションバトルも楽しみたいと言う人には若干不向きな作品となっているようです。(もちろん、難易度は選べますが、それでも往年のエムブレマーは物足りなさを感じる人はちらほらいるようです。)ちょっとオシャレゲームの雰囲気もありますからね。
誠実さの時代
筆者も戦闘は大好きなので、そこのところはちょっと残念ではありました。が、やはり、そうした少し物足りない戦闘面、戦闘の演出面を差し引いても、ライトノベル方面でここまで古きよき正統派中世ファンタジーの世界を突き詰めた作品も探そうとしてもなかなかないものです。これを携帯ゲーム機でプレイできるのだから、本当にいい時代になりました。
▲ 4/24 23:00頃在庫切れ
突き詰めた作品が少ないのは決して作れないわけではなく、数字が出ないからなわけですが、エコーズの初週売り上げは1位、ヒーローズで話題の最中にあることもあり、この分だと結構数字が出そうです。普段こういった雰囲気のいいゲームをプレイしない人も、案外簡単に、この手のゲーム特有の“ほぅっと”息をつくような感覚の虜にしてしまっているのかもしれませんね。
▲ マイニンテンドーストア限定「VALENTIA COMPLETE」の内容。竜と臙脂色で綴じたアートブックも、エコーズの上質感を現してる。(動画)
あ、あとBGMもいいです。(←いまごろ)アルムの戦闘BGMにはちょっとほろりときてしまいました。最近妙に涙もろいや。