ポケモンの新作を買って早速プレイする! という人は多いと思いますが、とりもげは(確か)初めての経験でした。
初代の赤・緑から金・銀、ルビサファ、ダイパ、(FRLG)、XY、サンムーンと一応一通りプレイはしているんですけどね。
youtubeでは、かなりの数の投稿者が剣盾の最速プレイ動画を上げていました。とりもげは購入勢なのでもちろん見てばかりではありませんが、この流行には、ちょっとした一体感、同じ目標に向かう共同作業感といったものを味わわせてもらいました。
世界が誇るポケモンですから、規模的には日本を飛び出して世界規模と言ってしまってもいいのでしょうね。とりもげはゲームは一人でコツコツとマイペースにやる派ですが、新鮮な体験でした。
一体感というと、一つに「スポーツ観戦」が挙がるのではないかなと思います。今はネット観戦も出来ますし、ネット社会の現代になり、流行り廃れの激しい世界の中、廃れていない文化の一つですね。
▲ ジム戦に向かう主人公と、相手のジムトレーナー。緊張感がやばいはずなのに、顔色一つ変えない主人公はさすが(笑)
このスポーツ観戦的雰囲気を取り入れたのが、今作のソード・シールド(剣盾)です。ジムトレーナーは「競技選手」であり、ジムリーダー戦にせよポケモンリーグにせよ、大きなポケモンバトルは全てスタジアム内で行います。もちろんスタジアム内は満員御礼。
その程は受付があることに加えて服も決まっているという徹底っぷりで、ポロシャツに短パン、ラインと広告の入ったさらっとしていそうな服装は、さながらサッカーか何かのユニフォームのようです。
そもそもポケモンのバトルには、特にアニメが始まってから、スポーツの試合めいたところがありました。主に気合や友情でなんとかするサトシの性格のせいでもありますが。(笑)
流血描写は抜きにして、(初期のポケモンは動物に似ているのが多いので)動物愛護団体からクレームが出なさそうな範囲でドラマを生み、さらに子供向け番組として放送する。となるとああいう形にならざるを得なかったのでしょうけどね。
ポケモンはシリーズを出すに従ってポケモンを変え、舞台を変え、システムを変えと様々な趣向を凝らしてきましたが、ポケモントレーナーという人々の実態、ポケモンバトルの雰囲気や舞台というものを根底から整えてきた初のシリーズとなりました。中身はもちろんポケモンなんですけどね。
目次
ポケモンが出ないOP~試合前の静けさ
とりもげはBWでオープニングに感動してしまったので、以降はOPは割と気にしているのですが、今回の剣盾ではOPでまさかの「ポケモンが出ません」。
ポケモン要素はモンスターボールがぽつんと置いてあるだけで、あとはスタジアムを見せるだけ。64で人気を博したポケモンスタジアムを彷彿させつつ、BGMも爽やかめではありますが、ポケモンが見られないので、少し寂しいようにも思います。
そんなOPは、ちょっと残念にも思うところでしたが、ある意味新鮮でもあって。単純に手抜きじゃないかと言うこともできますが、スポーツないし試合には特有の「試合前の静けさ」といったものを表現していると見えなくもありません。
……と、書いたあとにスクショを取得しようとしてOPを見たのですが、どうやら殿堂入り後(トレーナーカードかも)に手持ちポケモンと一緒に登場するようです。憎い演出(笑)
似非オープンワールド進出
ポケモンはグラフィックの進化は遅くてもいい
似非というと、なんだか悪い響きのようにも聞こえますが、これまでポケモンというゲームは近年話題のオープンワールド系ゲームと随分遠いところにありました。
ポケモンは据え置き機向けソフトではありませんでしたし、そのためグラフィックにも制限がかかっていましたからね。オープンワールド特有のリアルで広大な景色はなく、もともとポケモンというゲームが、オープンワールドゲームでは採用しない、ストーリーを追う王道的なRPGジャンルの中心地にいたこともあります。
また、ポケモンという生き物は、生物(動物)の在り方を根底から無視しているファンタジーもファンタジーなメルヘン的存在でもあります。
背景を写実に近くし、リアルに描き起こせば、毛感もなければ骨格も浮き出ておらず、血の表現もないフェアリーテイルなポケモンの世界観が台無しになる恐れがあります。(毛感や骨格感がリアルなピカチュウは可愛くないですよね~。今のところ頑張ってもぬいぐるみのようです。爬虫類や竜系ポケモンに鱗がつくのも同様に)
そういう非科学的な(一部は科学的だけども)立ち位置のポケモンがトレードマークである以上、ポケモンというゲームにとってグラフィックの進化は必ずしも必要でなかったとも言えます。(ポケモンGOという異例もありますけどね)
進化のギリギリのライン
ですが今作では、ニンテンドースイッチという変わり種ですが、ポケモンもついに据え置き機ゲームに参入。グラフィックは進化して、風景がよりリアルになりました。
▲ リアルな世界、風景といったものの基準は人によっていろいろあるかと思いますが、とりもげは植物の葉っぱの一枚一枚を描かれ、植物の生態がある程度判明するとそれを実感します。小物や光の反射の具合なんかもそうですね。
シリーズではお馴染みの「悪の組織を倒し、チャンピオンになる」という伝統的なストーリーはもちろんありますから、オープンワールドとは言い難いのですが、背景を子細まで描き、広大な散策マップのワイルドエリアの追加などにより、自由に歩き回れる感動はシリーズ一極まっています。
一方で、ポケモンの方はもちろんリアルにはなっていません。トレーナーや住人などの人間たちも同様です。ただ、リアルになった風景と、通例通りの人とポケモンを並べてみてもそれほどの違和感はありません。
今作の剣盾では、ポケモンという妖精的な、あるいはアニメ的生物的な存在に対するグラフィックの進化のぎりぎりの譲歩を垣間見たような気がしました。
ダイマックスの新要素
そんな剣盾の目玉要素の一つが「ダイマックス」です。
ポケモンを巨大化させて、対戦をするというもの。「一度の対戦につき1ポケモンが1回のみ発動」「キョダイマックスできるのは3ターンだけ」という制限つきのものですが、HPが飛躍的に上がり、技も100%命中し、フィールド効果を与える特別仕様のものになります。
ダイマックスをすると姿が変わるポケモンもしたりして、単純に進化を一つ加えるメガシンカシステムとは少し趣の違う方向で戦略的に楽しめる要素となっています。(ただ、野良のダイマックスポケモンとオフラインで戦う時、NPCが弱いのが考えもの)
良い点と悪い点
剣盾をプレイしてみて、良いなと思った点と、微妙だなと思った点を簡単に。
【いい点】最高峰のストレスフリー環境に
▲ ライド服もそのまま。個人的にライド服はダサいと思っている・ブティックで選んだ服で自転車をこげないので、ライドは微妙な要素だった。自転車の速度を上げてもたいして速度・持続時間が変わらないのも少し残念
かつて「そらをとぶ」「かいりき」といったひでんのわざマシンは必要不可欠の存在でしたが、サンムーンのライドシステムにより廃止されました。
それは今作でも引き継がれ、ひでん技ならびにひでん要員のポケモンは必要ありません。「かいりき」「いわくだき」といった、ダンジョンを進める上で必要になる謎解き要素もなくなりました。少し残念ではありますね。
「なみのり」に至っては、ラプラスやサメハダーに乗ってイケイケスタイルで水上を走り、気持ちがいいものでしたが、剣盾ではまさかの自転車で水面をこげるように。(笑)
他にも、
・オートセーブが可能
・ポケセンに「姓名判断」「技忘れ」「技思い出し」の常設
・戦闘時に「X」ボタンでモンスターボールをすぐ投げれる
・手持ちのポケモンに経験値自動振り分け(サンムーンから・ただしOFFにはできないため、経験値・努力値を振りたくない場合は預ける必要がある)
・どこにいてもパソコンのボックスを開け、手持ちポケモンを入れ替えられる
・努力値を振り分けられるドリンク系のアイテムの個数制限が解除
といったような、システム面の改善が大幅になされ、快適さに拍車がかかっています。
描写力に制限のかかる携帯機から脱却したこともあり、読み込みの遅延もほとんどありません。ストレスフリーで遊べるといった意味では剣盾は最高峰に位置するシリーズとなりました。
【良い点2】これまでになかった種類の名曲揃いのBGM
冒頭でも触れましたが、ポケモンソードシールドは、「スポーツ感覚」がテーマです。主人公はもはやただの年少トレーナーではなく、「ジムチャレンジャーという競技選手」であり、大きな試合は全て専用のスタジアムで行います。
スタジアムのバトルは常に衆人監視の元にあり、状態異常+回復、影分身戦法といった粘り戦法はたちどころにブーイングを浴びます……というのは嘘ですがw
バトルBGMにまさかの「観衆の声」が入ってます。これは驚きました。拍手まで入ってます。行動を起こせば悲鳴めいたものも入るし、相手のポケモンが最後の一体になると曲調が変わります。本格的ですよねー! 展開によって曲が変わるので、いかにも試合をしている風な感じです。
テーマが異色のスポーツだけあって、これまでのシリーズとは少し色合いの異なる種類の白熱するようなBGMに仕上がっています。
▲ 今作の悪の組織(?)エール団
逆にこれまでのシリーズと同様なのがオリーヴやローズのBGMです。ポケモンでは悪の組織との戦いがあり、幹部戦のBGMは屈指の目立つ名曲に仕上がっているのが常でしたが、スポーツがテーマの今回ばかりは少し印象が薄めのように感じます。名曲ではあるんですけどね。スポーツマンシップと悪の組織はちょっと相性が悪かったのかもしれません。
ちなみにとりもげが一番好きなBGMは、ラテラルタウンとキルクスタウン、リーグ戦のホップ戦です。
マンドリンを用いた情緒と感性溢れるラテラルタウン(乾燥地帯の街)とキルクスタウン(降雪の街)のBGMは個人的に大好きな曲です。
【悪い点】ポケモンは半分以上がリストラ
▲ ワイルドエリアで進化させるしか入手方法がなかったポケモンがゲットできるのは興奮したけれど……
ストレスフリーが極まっていることやBGMに関しては高評価な今作ですが、今作でのポケモン図鑑は400種類までとなっていて、一部のファンからは物議を醸しています。
剣盾の第8世代のポケモンを合わせると、ポケモンは全部で890種類(!)もいることになるのですが、実に約半分ほどのポケモンがリストラされることになりました。
リストラはリストラです。一切登場しないのです。
2020年に予定されている後のアップデート(ポケモンホームというポケモンをネット上に預けられるクラウドシステム)で、旧作からポケモンを呼び込めるようになりますが、剣盾で出現する400種類のポケモンに限るとの噂。
物議を醸している一部のファンとはもちろん、厳選や孵化などをして対人戦を楽しんでいたファンです。今作ではダイマックスがメインで、メガシンカもできなくなってしまったので、萎えてしまった人も多い様子。
とりもげは対人はしていない上、基本的には新規ポケモンで遊ぶ人なのでそれほど影響はありませんが、気軽に遊ぶ上ではあまり悪い点がなかったので、こちらを挙げておきました。(好きなマフォクシーとかヘルガーが見れないのは確かに残念)
ただ、選ばれた400種類のポケモンの内訳には、キャタピーがいるのにビードルがいない、ヒトカゲがいるのにフシギダネがいないといったことが起こっています。「有料コンテンツや、次作のマイナーチェンジ版か新作で全て・一部のポケモンが復帰する予定」などといったことは、十分に考えられるところではあります。
▲ 1月10日から販売することになったエキスパンションパス(有料コンテンツ)により、ガラル地方で登場しなかった一部の伝説ポケモンが登場するようになった。コンテンツは2020年6月末と秋に配信予定とのこと。
まとめ
とりもげは最近スイッチを購入したばかりな上、ポケモン剣盾はプレイしたスイッチのソフトの中でも二番目です。なかなか感動のツボが浅くて困っているところ。(笑)
それでも剣盾は、ポケモンにおける一つの要素がスッキリした作品であることは断言ができます。
主人公もといポケモントレーナーたちは、10歳という旅に出るには早すぎる年齢で旅立つ割には「お金に苦労する描写」が一切ありません。さらには宿にも泊まりませんから、職業的な不安がありました。家出した子供や浮浪者と同じですねw
トレーナーに勝利すれば賞金としてお金はもらえますが、その設定が生かされていることはゲーム内以外ではありません。なので、言わばカツアゲみたいなものです。(笑)
お金ないし、「お金があることで出来ること」の描写を省いていることは、(子供向けの)ゲーム全体で言えば、珍しくはありません。ただ、主人公は学校に通っているわけでもないし、無償で人を助けるヒーローになっているわけでもない部分を加味すると、なかなか珍しい例です。彼または彼女には、具体的な将来性がありません。
「子供の冒険欲や将来性を大らかに表現している」と言えば、聞こえはいいのですが……
ですが剣盾ではその辺のゲーム寄りのアバウトな設定が、主人公も迎合することになる「競技選手」という職業的な立ち位置により初めて上書きされました。
▲ 今作のチャンピオンであるダンデ。ホップの兄でもある
ポケモントレーナーはスタジアム内で観客が見る中でバトルを繰り広げます。バトルに勝ち、トーナメントを勝ち抜けば、ファンがつき、カメラマンなどのメディアからは取材を受けるように。
大人でありチャンピオンでもあるダンデのマントに会社のロゴがぺたぺた張り付いているのが一つの象徴ですね。有名選手がそうなるように、彼は広告塔です。彼は広告を自身に貼りつけることでお金をもらっていることが窺えます。(公式的にはそうじゃないと言う・言わないかもしれませんけどね)
ポケモントレーナーは彼のようなスターになることを目標としています。チャンピオンでなくとも、ジムトレーナーになったり、ホップが志したように研究職に就いたり。色々と道はあるかと思いますが、剣盾はスポーツマンシップという爽やかな趣向を取り入れつつ、主人公を含むポケモントレーナーたちの歩む「明確な一つの目指す道筋」が示された快作のように思います。