年末年始の放送休止を挟み、転スラは2週間ぶりの放送となったわけですが、良かったですねー!
「安らかに眠るがいい、ゲルド」
14話がオークとの決戦回になるだろうとは予想していましたが、(ゲルドの)裏切りめいたシーンあり、激闘シーンあり、涙腺を刺激するシーンあり、そしてそれを助長しているガビルの熱演があるなど、考えてみればかなり密度の濃い1話になっていました。
転スラはweb版、書籍版ともに、リムルの第一人称の心境吐露をメインに読みやすさをかなり意識されたライトノベル作品です。本作は常にリムルの脳内に語り掛ける大賢者の存在が特徴的ですが、世界観の説明と状況の解説にとどまっています。
なので、背景や状況などのいわゆる第三人称視点での客観的な細かな描写に関しては、製作陣の方で汲み取って補完・追加するなり、コミック版を参考にするなりして、アニメ的な演出で補っていく必要があります。(コミック版が傑作になっているのは、乱れのない精緻な絵柄もそうですが、この想像力の保管がとても上手くいっているためです)
別にそんなに大して待っていたわけではないですが、今回の密度の濃い力作話は、そんな懸念事項を改めて吹き飛ばしてくれた神回になっていました。少し今更感がありますが、改めていい製作陣に恵まれたなぁと思います。(´∀`*)以下見どころのクローズアップ。
リムルのソウエイ並みの冷徹な本気戦闘場面
これまで戦う場面はいくつかありましたが、リムルは基本的に真面目に戦ってきていません。
それはリムルが相手が明らかに格下の相手だったことや(対牙狼・対オーガ)、リムルがまだ自分のスキルや世界観に関して熟知していないことからくる照れ隠し(対イフリート)、ランガやオーガたちの部下たちが優秀すぎていて任せていたなどの理由からきていますが、今回は自ら率先して戦いに臨み、おちゃらけてみることなく戦い抜きました。
オートモードは大賢者にスキルの行使から肉体の使役権まで全てをゆだねているので、リムルが率先してとは言いづらい部分もありますが、任せたのはリルムですし、ゲルミュッドへの腹パンはweb版の方ではなかったやり口。(かなり手加減していて、「味(スキル)は美味そう」とか、魔物的な愉悦感もあった)
魔王種で、オーガたちでは厳しいほどの、初めて油断のできない相手であったということもあり。
ガビルの部下たちが倒れる一連の5行足らずの短いシーンをしっかり泣かせる場面に描いてもきていますし、ゲルミュッドを捕縛した糸がすぐに切れてしまったことも含めて、リムルないし三上悟37歳の大人な怒りと本気が一つ露わになっていた一場面でもありました。
ゲルドの過去への追体験と精神的な会話のやり取り
「さぁ食べなさい。しっかり食べて大きくなるのだぞ」
「一昨日生まれた子が今朝死んだ。昨日生まれた子は虫の息だ。この身はいかに切り刻もうと再生するのに。これが絶望でなくてなんだとういうのだ」
食らい合いの最中、リムルは魔王ゲルドの過去を追想しました。シズのときは短く終えていましたが、食らった相手の過去を追体験するのは良い演出ですよね。
▲ リムルの周りから草原が広がっていく演出にはちょっとゾクっとした
そんな魔王ゲルドの過去の追体験は、セピアがかった色合いで、魔王の方のゲルドを棒立ちさせたり、食われている途中経過を出したり、とても丁寧に描かれているのが伝わる内容となっていました。
「強欲な者よ…俺の罪を喰らう者よ…!」
▲ オーク・ディザスターの魔王顔からこの泣き顔は卑怯
冒頭でも言った、製作陣の想像力の補完力とも言うべきものがたっぷり発揮されてもいて、14話中一番の見どころであったのは言うまでもありませんね。
「俺は他の魔物を喰い荒らした。ゲルミュッド様を喰った。同胞すら喰った。同胞は飢えている。俺は負けるわけにはいかない。(中略)俺は負けるわけにはいかない。俺が死んだら同胞が罪を背負う。俺は罪深くともよい。皆が飢えるこのとないように俺がこの世の飢えを引き受けるのだ」
「それでもお前は死ぬ。だが安心しろ。俺がお前の罪も全て喰ってやるから」
なによりこの両者のやり取りが、人間ではなく魔物同士で、さらにはリアルでも転スラの世界でも弱い魔物であるオークとスライムのやり取りだと思うとちょっとユニークでもあり、転スラの“魔物劇”としての魅力を再認識させられる部分でもあります。
お調子者ガビルが仲間に泣くシーン
「ガビル様が無事で…」
「あ…あぁ…!」
そして、個人的にはやっぱりガビルです。
web版ではアニメ版と同じくガビルの3人の部下たちがガビルをかばって犠牲になりますが、5行足らずの短いシーンになっていますし、コミック版では状況を分かっていないガビルに間髪入れずゲルミュッドが攻撃を仕掛けて、リムルがそれを防御するに終えています。
書籍版は読んでいませんが、おそらくコミック版が準拠しているのではないかと思うので、ガビルが泣き叫ぶシーンは製作サイドで判断して制作した見せ場。
「ゲルミュッド様ぁぁぁ!」
元々ガビルは笑わせてくれるキャラでもあり、カリスマ性のあるキャラでもあると同時にいわゆるしょっぱいキャラでもあったのですが、ここにきてそれらの要素がふんだんに生かされる結果となっていましたね。そんな超がつくお調子者でおバカという名の純粋さも持っている彼が心から泣き叫ぶシーンには、福島潤さんの名演技もありギャップもありでと、ちょっとうるっときてしまいましたから。
前話で、かっこよくカリスマ性を発揮していただけにね。少し無邪気さは少ないですが、トリックスターとは彼のようなキャラのためにある言葉。
「しっかりしろ!我が輩のためにこんな…!」
リザードマンって魔物のなかではだいたい中の下といった扱いで、そんなに強い魔物ではないですが、個人的には「真面目な一族」のイメージはあります。真面目といっても、柔軟さがないわけではなくて、だからこそ地味な魔物の最有力候補。(魔法もほとんど使えませんから、ゲームの敵としてもそんなに怖くないっていう)
そういう地味なイメージが先行しているという意味でも、そんなリザードマンのイメージをもろともせずに貴族のお坊ちゃんをベースに、福島潤さんボイスで自分の世界観とくるくる変わる表情をこれでもかというほど表現しているガビルくんは筆者の印象に残ったのでしょうね。
「(だけど俺はガビルを気に入った。助ける理由なんてそれで十分だ)」
▲ 一瞬とはいえ仲間を失い、泣き叫んでいたガビルへのリムルの声音はちょっぴり優しい
魔物なのに人間くさいという言葉を贈るなら、今のところガビルが一番です。
猪年なのに…
余談ですが14話に際して「猪年なのに」と言っている人がいて、爆笑したのはここだけの話。新年一発目の放送だしね。(笑)イノシシだからセーフセーフ。
デジタル大辞泉 – 猪/豬の用語解説 – イノシシやブタの総称。特に、イノシシ。
あっっ。(;´Д`)